完全初心者への指導は、構えを固め、ジャブを覚え、それから防御へ進む。この順番が一般的です。しかし今回の初回指導では、早い段階から「当てて避ける」までを体験してもらいました。
今回のパーソナル指導事例
ボクシングコーチ・久田哲也が行った、50代男性への初回90分パーソナル指導事例です。対象者はボクシングを含むスポーツ経験がなく、近年は週6回の筋力トレーニングを継続していました。個人が特定されないよう、一部の情報を一般化しています。
初回の目的は「きれいな形」ではなかった
完全初心者の場合、技術的な欠点はまだ決まっていません。初回で見るべきなのは、左右の理解、力の入り方、リズム、足と手の連動、視線、説明への反応です。
そのため、最初から一つの型を完成させるのではなく、複数の動きを安全に体験してもらい、どの説明で動きが変わるかを観察しました。
実際に行った指導の流れ
- 構えと左右の確認
- 軽く柔らかいジャブと、当たる瞬間だけ握る感覚
- 左右のリズムと足運び
- 相手全体を見る周辺視野と防御
- 「当てて避ける」を早い段階で体験
- ストレート、フック、アッパーと重心移動
- コンビネーション、バックステップ、速度を変えた反復
なぜ、防御を後回しにしなかったのか
ボクシングは、攻撃だけを行う競技ではありません。最初に「打つだけ」を覚えると、あとから防御を付け足す学習になりやすくなります。
初回から「打った後に避ける」「避けた位置から打つ」を入れることで、攻撃と防御は別々ではなく一つの流れだと理解できます。これは久田式でいう攻防一体の入口です。
筋力がある人ほど、力を抜く練習が必要な場合がある
筋力トレーニングを継続していることは強みです。一方で、パンチを強く打とうとすると、腕や肩を最初から固めることがあります。
そこで「強く打つ」ではなく、軽く柔らかく触れ、当たる瞬間だけ握るように伝えました。目的は威力を測ることではなく、力を入れる時間と抜く時間を分けることです。
初心者指導で分かったこと
- 部分を完成させてから次へ進むより、先に全体を体験した方が理解しやすい人がいる
- 最初から攻撃と防御を一緒に扱うと、ボクシングの目的を誤解しにくい
- 説明の言葉を変えた時の反応が、その人に合う学習方法を知る材料になる
初回90分を終えて
初回は、構えからパンチ、防御までをひと通り体験してもらいました。終了後には「月2回くらい続けたい」というお話もあり、ボクシングの面白さに触れてもらえる時間になりました。
今回大切にしたのは、きれいな型を押しつけることではありません。力まず動ける構えや、足と手が自然につながる感覚を、一緒に探していきました。
監修:久田哲也(第40代日本ライトフライ級王者・プロ通算47戦)
本記事は実際の指導記録を匿名化して再構成しています。




